中置をはじめて勉強する時、大部分の指導者は、「中置は10月になるとだんだん寒くなってきます。お茶は客に寒さを感じさせないために風炉を畳の中央に置き、水指を客から離れた勝手側に置いたのですよ。お茶はそんなところにも客に対する心がけが表れているのですよ」のように説明をすることが多い。
又、客もこれを聞いてお茶の心に打たれ感動する場面が見られます。
出版されている本にも書かれていることがあるばかりでなく、各流派の家元の中で某家元自身もそのように説明しています。
もし、寒くなった理由から客へ配慮したものなら、風炉の点前は正式で真冬の深々雪の降る時は、なおさら水指を客から離し風炉を客に近づけなければなりませんが、決してそのようなことはしません。
それから考えても、寒くなった理由で風炉が畳中央、水指が勝手側になったと説明するにはこじつけであることがわかるでしょう。
このように中置の点前を説明しているのは明らかな間違いです。
茶道の原点である奥秘十二段を知らないがゆえに、口伝と言う手法で長い歴史的経過のなかで、時の指導者がさも納得がいくように作り上げ、自らも信じて伝承してきた結果、生まれた説明なのです。
それでは中置の真意味とその点前のルーツをお話しましょう。
10月は茶道のの世界では風炉の季節が終る最後の月です。
俗に最も詫びた時節とも言われ、道具もしつらえも詫びた表現で行われることは皆さんも周知のことと思います。
11月になれば、お茶の世界では炉の季節で始まりでもあるのです。
そういう意味では11月は、茶道の正月とも言われることがあります。
その10月は一番詫びた季節と言うことで、詫びた道具仕立てと配置が行われたのが中置なのです。
千利休が大成した奥秘十二段は、
「真之真」、「真之行草」、「真之行」、「真之草」
「行之真」、「行之真草」、「行之行」、「行之草」、
「草之真」、「草之真行」、「草之行」、「草之草」であります。
これらの点前で「真之真」から始まって「草之草」までの中で10月の詫びの点前として
「草之草」の道具配置が中置の点前として用いられたのです。
「草之草」の道具配置は風炉が台子地板上中央、水指(細水指で名物級)が台子地板上勝手側で、そのまま詫びた中置の配置に活用されたのです。